夜バラナシを歩いていた時のこと。
インド人、急に走ってやってきて自分の手を握り出す。
自分「なんだなんだ急に」
インド人「手を揉ませてくれ。君の手をマッサージしたいんだ。」
自分「やだよ、どうせお金取るんだろ?」
インド人「いいや、これはフリーのマッサージだ。任せてくれ。私は日本人が大好きだ。そして君はブラザーだ」
自分「あ、そうなの?まぁ無料なら有り難く揉んで頂こうかしら」
インド人、手を握ってモミモミし始める。
インド人「いやーインドと日本はグッドリレーションシップね。ワタシ、長澤まさみにも会ったことある。日本人大好き。」
手モミモミ。
自分「へーそうなんだ。あーめっちゃ気持ちいい。あー極楽。おじさんマッサージの達人だね」
インド人「そうだろう?君は良いやつだから肩と背中もオマケしちゃうよ。特別に100ルピーでやってあげるから」
自分「100ルピーかぁ。うーん手のマッサージ気持ちよかったしまぁいいか。お願いします。」
インド人「ほいきた。じゃあそこのベンチに横になって。さぁほら。」
インド人、大勢の人が座ってるデカベンチを指差す。
大勢に人に見られながらマッサージされるのは少し恥ずかしかったが素直に横になる。
みんなに見られながらインド人に肩や背中をマッサージしてもらう。
上手い。モミモミ。
自分「いやーきもちよかった。ありがとう。100ルピー払うよ。」
100ルピー札を差し出す。
インド人「君は運がいい。今回はスペシャルサービスで下半身もやってやる。もっかい寝ろ」
自分「いやもういいって。やって欲しいけど今ちょうどお金ないのよ。」
インド人「オカネ、ジュウヨウジャナイ。これは僕の気持ちだ。やらせてくれ。」
自分「そんなことある?本当に金取らない?」
インド人、モゴモゴうなづく。
インド人、下半身のマッサージをおもむろにはじめる。
自分「親切なインド人もいたもんだ。お金は重要じゃないだってさ。そんな人もいるんだね。」
マッサージが終わる。
自分「あー気持ちよかった。ありがとうね。はいこれ100ルピー。」
インド人、真っ直ぐこちらの目を見てくる。
100ルピーを受け取ろうとしない。
インド人「本当に100ルピーでいいの?」
は????
ふと思い出す。チップか。
自分「ああチップね。ごめんごめん30ルピーくらいでいい?」
インド人、じっと目を見つめてまた受け取らず。
インド人「あなたはワタシのマッサージでとても幸せになった。幸せになった分払ってくれ。
ハウマッチハッピー、ユーペイ。」
ハ、ハウマッチハッピー、ユーペイ?
初めて聞く単語の並びだ。
面白い。ここはインド。そして俺は貧乏金なし。
時間だけは無限にある。
ここは値切るに限るでござる。
自分「いや勝手に俺の幸せを決めないでくれよ。
ちょうど100ルピーくらいの幸せだったよ?まぁよくて150ルピーくらいの幸せだったね。」
インド人「いーやお前はとっても気持ちよさそうにしてた。あの顔は確実に500幸せはいってたね。」
自分「500幸せ!?笑わせないでくれ。俺は500も幸せになった覚えはない!せめて200幸せだ。」
インド人「あんな気持ちよさそうにしといて200幸せなわけないだろ!お前はもっとハッピーだったはずだ。せめて300幸せだな」
自分「くっこいつ…。しぶといな。何でこんな堂々と俺の幸せを決めてくるんだ。でも言われてみれば300幸せくらいあったような気がしないでもないな。あれ?どうだったっけ?」
インド人「ほれ見ろ。お前は幸せだったんだ。
さぁ金を払え。」
自分「んーーーー。納得がいくようないかないような。まぁもう300幸せくらいだった気もするし考えるのめんどくせえや。払っちゃうか。」
自分、300ルピー差し出す。
インド人、目にも見えないスピードで300ルピーを奪い取る。
「やっぱり200幸せだった!」とごねる時間を与えてくれない。敵ながら見事な手捌きである。
インド人「まいどあり!君は最高のお客さんだ!日本人大好き!」
相場よりもぶん取れたのだろう、インド人はご機嫌そうにそう言って去っていった。
自分「あれ?値段ってなんだっけ?なんなんだよハウマッチハッピーユーペイって。値段ってこんな感じで決めるやつだったっけ?」